プリーの火葬場〜メメントモリ、ベロベロウシ。

ナマステー。プリー・サンタナロッジの翔です。
ここの所雨は全く降らず、昼間の散歩も苦にならない気温に落ち着いています。
例年より早くお客さんが増え始め、部屋はすでに8,9割がた埋まっている状態です。
先日、ちょっと仕事をサボる物思いにふけるためにプリーの火葬場に行ってきました。

火葬場と言うと、ヒンドゥー教最大の聖地でガンガー(ガンジス川)沿いの町、バラナシが有名です。
プリーも、サンタナ周辺にいると旅行者としては殆ど実感できませんが、ヒンドゥー教4大聖地のひとつです。
同教徒にとっては、プリーはジャガンナート寺院の町、そして火葬の町でもあるようで、
市内、近郊の町、オディシャ(オリッサ)州内、あるいはもっと遠方からもこの地での火葬を望んで、
死者たちがやって来ます。



火葬の様子は観光客が見学することができます。
写真を撮ったりせず黙って見ている分には、遺族が気を悪くするようなこともありません。



火葬場のビーチ側エントランス。SWARDADWAR(ソルグドゥワル)はオリヤ語で火葬場の事。
車が並んでいて分かりづらいため、火葬場に着けない人もいます。この看板を目印に。



火葬場の敷地内は焼き場が大半を占め、周りに儀式のための祭壇やほこら、
火葬に使う薪の切り場があります。
付近の住民のゴミ捨て場にもなっていて、牛、犬、カラスが敷地内をウロウロしています。
焼き場の隅に腰を下ろすと、野良犬たちが唸って来ましたが、持っていたパンをあげると
すぐに尻尾を振ってくれました。
バラナシの火葬場では旅行者からお金を巻き上げようとする輩が鬱陶しいこともありますが、
ここでは誰にも邪魔されずに見学することができます。



火葬場。ゴミの山のすぐ裏で、遺体が火葬されている

薪の切り場



ぼけーっと座っていると、一頭の牛が近づいて来ました。
普段、特に食べ物を持っていない人間にわざわざ近づいてくる牛はいないのですが・・
一体何のご用でしょう?
牛さん、目の前で立ち止まると、あひゃっいきなりワタクシの膝を舐めてきました。ベーロベロと。
なんだかようわかりませんが、牛さんはヒンドゥー教の神様の乗り物、聖なる動物です。
聖地で聖なる動物がわざわざお舐めになってくれるのだ、これは何かの吉兆なのでは。
インド人でたまに、すれ違う牛の頭に触った後、その手を自分の頭に当てている人がいます。
それに倣って牛さんの頭を撫でまわします。
あ、牛さんの舌ってザーラザラだ。




ヒンドゥー教徒の中には死者の写真を撮ると、輪廻の輪から逃れられなくなる、と考える人がいます。
ごくまれに遺族で写真や動画を撮っている人がいますが、輪廻云々が無くても
亡くなった人を赤の他人に撮影されれば当然気分よろしくありません。
カメラを持っていると子供も大人も「ワンフォト!」と写真に写りたがる人が多いインドです。
外国人旅行者の中にはつい遺体にカメラを向けてトラブルになってしまう人もいます。
火葬を公開するという、出身国との慣習の違いから線引きが難しくなってしまうのでしょう。
見学される方はその点だけご注意ください。



ところで、さっきからずーっと牛さんに膝を舐めらているんですけど。。ベーロベロと。
あの、牛さん、ちょっとワシ今考え事しているから、今日の所はこの辺で・・
ベーロベロ。
牛さんってば。
ベーロベロ。
ザラザラの舌で執拗に舐められているうちに、紙やすりの如く膝周辺の角質が削られていく感覚が
ザーラザラ。
つまり、痛くなってきた、
ベーロベロ。
牛様、もうご勘弁を・・
ザーラザラ。
いたいいたいっ、撫でまわしていた牛さんの頭を押しのけるも、すぐにまた
ベーロベロ。
ちょっ、やめっ、
ザーラザラ。
いたっ、頭を押しのけ体をバンバンぶっ叩いてもびくともせず、
ベーロベロ。
おい牛!やめろ!※チョロ!  ※ヒンディー語で「あっち行け」
ザーラザラ。
いててて、おい牛コノヤロウ、この場でステーキにするぞ!
ベーロベロ。
おい牛!
ザーラザラ。
牛!
ベーロベロ・・



結局、仲良くなった野良犬の陰に回り、ザラベロから逃れたのでした。
火葬場のスタッフに笑われました。
膝はベチョベチョ。



インドで野良犬に助けてもらうのは2度目。その辺のエピソードもいずれ。



3年前のプリー滞在中、サドゥー――ヒンドゥー教の修行僧で、聖者ともみなされる――に
火葬場と周辺を案内してもらったことがあります。
「火葬の写真を撮りたいだろう」と、焼き場でそのサドゥーが火葬中の遺族に話をつけてくれました。
このジャパニに写真を撮らせてやれ、と。
遺族の方々も、サドゥーが言うのなら、と撮影を承諾。
遺体の写真を撮りたかったわけでは無いのですが、せっかく滅多にない機会を頂いたので、
シャッターを切りました。
さすがにインターネットで公開することはできませんが。


案内してくれたサドゥー。3年前、火葬場にて。



“先進国スタンダード”への信仰心を揺さぶられる日常故か、
インドで人生観が変わった、という旅行者は少なくありません。
牛さん、火葬前の遺体の傍らに置いてあるお供えの花を食べ始め、
泣いていた遺族が慌てて追い払っています。
近所の人が残飯を捨てに来て、動物たちが集まって来ました。
道路を挟んだ向こうではビーチで遊ぶ観光客たち。
インド旅行中、火葬場で“人死観”が変わるかもしれません。





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